中殿:ただ大君を生みたかったのです。いえ生んだふりでもしたかったのです。
キムホン:国母として当然の義務、欲でしょう。
中殿:ええ。けれどもそれよりももっと大きな理由は、認めてほしかったのです。お父様に。家門の利得になりたくて、恐れ多くも国王の種を奪いました。私が。
キムホン:あんなにいつも言っていたのに、口を開いたかと思えば...
中殿:いくら納得できなくてもお父様の血筋ですから。ただの一度もなかったのですか?私が子供として目に映っていたことが。
キムホン:中殿の座を守ろうと、自分の子供まで亡き者にしようとする母として言う事ではないでしょう。
中殿:ええ、お話を聞いたら、血筋は確かに間違いないですね。邪魔になると誰だろうと捨てて、殺すこともできる...まさに瓜二つですね。
キムホン:私に認めてほしかった...それは妓生の子であるお前が言えたことじゃない。ただ私が作った中殿の座に有難く思いながらちゃんと守って生きるのだ。
ドラマシーン↓
やはりこの二人のシーンは集中力があります。
原作小説にはないドラマだけのストーリー。
中殿の表情は、最初からもう何かふっきれた感じがします。
たぶんヨンに子供の入れ替えのことで問い詰められた時にもう終わりを悟ったんでしょう。
そして、外でこの話を聞いていた王と世子がやってきます。
やっぱり中宮殿での会話は廊下に筒抜けなんですね。
10年前ヨンの母(中殿ユン氏)とキム・ホンの回想シーン
キム・ホンは、禁書だった『天主実義』<イタリアのイエズス会司祭(マテオ・リッチ)が中国で書いたカトリックの教理書>を中殿ユン氏が実家にいるときに読んでいたことを指摘します。でも画面をみると「天主実意」になっている!
韓国に天主教(カトリック)が最初に伝わったのは宣祖(在位1567 – 1608)の頃だそうです。「天主実義」は李晬光(1563‐1628朝鮮中期の実学者)が「芝峰類説」という著書の中で紹介したそうで、洪吉童伝を書いたホ・ギュンも天主教を研究していたそうです。その後正祖(在位1776 -1800)の頃、チョン・ヤギョン兄弟たちによって再び天主教が盛んになり、現在の明洞聖堂の場所に最初の天主教会ができたそうです。しかしその教えは忠孝思想と君主関係で成り立つ儒教とは相反するために邪教とされ徐々に迫害も強化されるようになります。日本の歴史と似ていますね。
好奇心で読んだことがある程度で、自分はキリスト教を信じていないという中殿ユン氏ですが、
キム・ホンは中殿ユン氏がヨンに対して身分を問わない平等な国を説いていたことも指摘します。
中殿ユン氏は、洪景来の乱のあと国王と民たちがどれほど傷ついたかを話し、
ただ世子が民の一人ひとりを大切に思うように願っただけだと言います。
キム・ホンは中殿ユン氏に、廃庶民になって世子を罪人の子とするか、傷のないままで自らその座を降りるかの選択を迫ります。
回想シーン終わり
王から受け取った手紙を読むキムホン
殺害された女官が床に隠した手紙には、実は世子への言葉の他にも、色々なことが書いてあったようですね。
そこへユンソンの死を伝えるため内官が入ってきます。
これまでの罪がすべて明らかになるキム・ホンと中殿キム氏
・中殿キム氏の身分を偽って王室と朝廷を侮辱した罪、
・世子を陥れようと毒殺しようとした罪
・中殿ユン氏を殺害し長期間隠ぺいした罪
これらをふまえ、
「罪人キム・ホンは領議政の職位をはく奪し、東宮宮に刺客を送り謀反を起こした前吏曹判書キム・ウィギョと前戸曹判書キム・グンキョと共に斬首に処す。また、身分を偽り公主と大君を入れ替え、王室にぬぐえない傷を残したキム氏を中殿の座から廃す。」
と言い渡されます。
キムホンは「最後にユンソンの部屋を見ておきたい」と言います。
武士の情けって言葉は韓国でも通用するのか?とにかく一人で部屋に入ることが許されます。
ここで回想シーン
以前から疑問に思っていたユンソンの子供の頃の占いの場面が再び出てきました。
やはりヨンとユンソンは복건(頭巾)を交換していたのでした。
そしてその様子をキムホンが見ていました。
ですから占い師が言っていた短命なのは世子でなく、世子の頭巾を被っていたユンソンであることもキムホンはわかっていました。
もしかして、世子の運命が大きく変わったら、ユンソンの運命も変わると思っていたのでしょうか。あるいはユンソンの進む道を大きく変えることができれば、運命も変わっていくと信じたのでしょうか?
だからあれほどまでに強引な手を使って人々の運命を変えようと画策したのでしょうか?
結局、ユンソンを失ってしまったキムホンは自ら死を選びました。
この結末のためには結局ユンソンも死ぬしかなかったということでしょうか。
小説の結末とは違うユンソンの死がやっぱり残念です。
そして今一つ、キムホンの野望が最終的にどこにあったのか疑問が残るのですが、次へ進みます。
ヨンは母の眠る陵へ
母との約束を思い出すヨン
「私は世子が聡明な王になってほしいと思います。
高い位に就くと低い地位にある人のことが見えなくなるものだからです。
耳のよく聞こえる王になってほしいです。
目の前で大声を出す人の声だけ聞いてはダメだからです。
一人ひとりが世子のかけがえのない人のように見守って下さい。
必ずそんな王になると、この母と約束してくれますか?」
ヨンは「はい、深く心に刻みます。どうか見守って下さい 母上」と誓います。
ラオンはこれまでの功績によって
全ての罪がヨンによって許されました
ハヨンは世子嬪の座を退きたいと王に申し出ます。
一度世子嬪の座に就いたら、その座を退いても一生独身でいなければならないが、それでもいいのかという王に対し、
ハヨンは、世子の側にいれば、いつかは心を開いてくれるだろうと信じていたが、世子のために何もできない自分自身を憎むことがどれだけ愚かなことかに気が付き、世子の負担になるようなダメな妃でいるより、独身でも一人で堂々と生きていきたいと話します。
ちなみに、揀択(王や世子の妃選び)では最終選考に残った三人のうち一人だけが世子嬪になり、あとの二人は世子嬪になれなかったからと言って他の所に嫁ぐことできなかったそうです。そのため一生独身か後宮(側室)になったとか。
なので、ハヨンも世子嬪の座を降りたとしても当然独身でいるしかないのですが、
王の特別な計らいによって世子嬪の記録を消し自由の身になりました。
この時代に女性がたった一人で生きていくことは大変だと思いますが、現代的な思考を持つハヨンなら新たな人生をたくましく生きていくことでしょう。
<ロケ地情報>
ハヨンの最後の場面に出てきた場所は、このブログでしつこく「茶の貼り紙」を取り上げていた場所です。
その場所は
忠清南道扶余(プヨ)郡にある「ソドンヨテーマパーク/서동요테마파크」です。
ドラマ「ソドンヨ」のオープンセットがそのまま残され、今も様々なドラマの撮影地になっているようです。
住所:충청남도 부여군 충화면 충신로 616(忠清南道 扶余郡 忠化面 忠臣路 616)
地番住所:충청남도 부여군 충화면 가화리 279(忠清南道 扶余郡 忠化面 可化里 279)
HP↓
こちらにも情報があります
あの茶の貼り紙の場所
一年後
ヨンは王になっていました。
龍の爪、5本あります??
龍の爪は王は5本、世子は4本、世孫は3本だそうですが...
チャン・ドッコも茶山先生もいます。
妙に目を合わせたり、目くばせするのがわざとらしいですが...
茶山先生は臣下の中で一番先頭にいるので、領政になったのでしょうか?
史実では孝明世子は王になる前に亡くなっています。
小説でもヨンは王になりませんでした。
ここからの展開は完全にドラマだけの物語です。
ヨンは玉座に座らず、階段に腰を掛けます
「これからもずっとこうするつもりだ。民と私の間にある高低、そなたたちとの距離、すべてから一段近づいていこうとする心を理解してほしい」
母の教えを実践して新しい世を作ろうとする、その第一歩の姿です。
内侍院では新しい小宦(見習い)たちがたくさん入ってきました。
トギとソンヨルも万年小宦から後輩を指導する立場になったようです。
ふと新入りたちを眺めていると、その中に...
ソンヨル:ト内官、今妙な気分がしているのは、私だけではないでしょう?
トギ:いつどこだったか、我々が経験したあの感じですよね?
二人の視線の先には...
新人内官の中に女の子みたいな子がいる!
この第二のホン・ラオン役にキム・スルギさんがカメオ出演していました。
ちょっと検索してみると...
昨年12月にMBCで全2回で放送され、Naverのwebドラマとしても全10話で公開されたドラマ「ポンダンポンダンLOVE」が気になりました
MBCドラマ公式サイト↓
修能(大学入試)当日に朝鮮時代にタイムスリップする高三女子役で出演しています。そして公式サイトに公開されている画像を見ると、なぜか内官姿のキム・スルギさんがいます~ちなみに王はBEASTのドゥジュンさん^^
画像:MBC[ポンダンポンダンLOVE]公式サイトより
そしてこの二人もハッピーエンディング
99本のバラを用意して公主に次々と手渡す演出を準備したチョン・ドッコ
残りの一本は私?という公主に、
チョンドッコはとっさに手にしていたバラの花を捨て
「その通りです、花が公主様なのか、公主様が花なのかわかりません。公主様、私と結婚してくださいますか?」とポロポーズ
プマ(부마/駙馬)=王の婿(公主や翁主の夫のこと)になると出世の道は閉ざされるのに、それでもいいの?という公主に
チョン・ドッコは「私にとって、あなたと歩むがすべて花道なのに出世の道なんぞ、ハハハ 私はあなたさえいればいい」と言いました。
めでたし、めでたし。
場面は変わって
ビョンヨンは洪景来と一緒にいました
二人は市中で庶民と一緒にユンノリをするヨンの姿を眺めながら語ります
ここも「ソドンヨテーマパーク」での撮影ですね
ビョンヨン:「烘雲托月」という言葉をご存知ですか?
洪景来:雲を描いて月の光を輝かせる...そういう意味ではないか?
ビョンヨン:一人で輝く太陽でなく、民たちの間にいる時にこそ輝く月光のような君主
殿下はそんな方であられるようです。
洪景来:それで殿下のために雲として残りたいということか?
ビョンヨンは삿갓(サッカッ/編み笠)をかぶって放浪の旅をしていることで、実在の人物である金サッカの姿を連想させるようにしたのかしら?特に詩歌を書き残しているような説明はありませんでしたが...
小説では、最後の方で、ビョンヨンが全国を旅しながら宿泊費代わりに詩を書いたりするうちに、誰が呼んだか金サッカと呼ばれているという話が出てきました。
そして「烘雲托月」こんなところでこの言葉を聞くとは...
ちょっと小説とはこの言葉の解釈が違うようです。
ドラマでは民たちの中にいる王の姿を描き、「烘雲托月」という言葉を当てはめています。民が生き生きとしている国の王は当然素晴らしい国王と言えるでしょう。王一人だけが輝くのではなく、民たちと同じ目線に降りてきて一緒に交わる王。臣下にも一段下がって近づくことで、その声に耳を傾けようとする王。ヨンの作る新しい国づくりの姿勢が「烘雲托月」という言葉にたとえて描かれていました。
小説で「烘雲托月」という言葉はヨンがラオンに説明するときに出てきました。太陽のように明るい存在は政敵が放つ矢を避けることが難しい。空を守っているものは太陽だけではない。一日の半分は月が守っている。だから自分は月になって暗いところから政敵を見つめることにする。そいう話をしていました。
ところで白雲会はその後どうなったのかしらね。
さて、最後はお待ちかねメイン二人の登場です。
ラオンは市中で書店?貸本屋?営んでいるようです。
そういえば、第1話でも書店か書庫のようなところに「雲が描いた月明かり」の本が置いてあり、それを開く所から物語が始まるという場面がありましたね^^ 1話と18話がここでつながった気がしました。
稀代の名作を書くと言って顔を見せなかったが、
それがこれのことなのか?というヨン
ラオンはヨンが表紙だと売り上げが違うからと。
ヨンは、お代はきっちり頂くと言って顔を近づける
ラオンは口元を押さえ、辺りを見回し「ここで?」と言います。
ヨンは「何を考えている?本一冊あたり一文だ。 むやみに使う美貌ではないであろう!」と。
やっと楽しい場面が戻ってきました。
ほんの20,30分前には本当に色々と悲しい出来事があったのに、
ここにきて突然二人のラブラブな場面を見せつけられても...
私の中では気持ちの整理や切り替えが簡単にできないのですが...
ドラマ視聴時からかなり時間が経って、ようやく今頃になってから
このシーンを素直に受け入れることができるようになりました。
レビューが遅くなったのも、そのためです。
そして最後に本当にきれいな場所が出てきました
ピンクのコスモス畑。本当に童話の世界のようです~
ヨン:「雲が描いた月明かり」とは。どんな内容なのだ?
ラオン:遠い国に花のように美しい世子様がいらして、
ちょっと世間知らずで、少々気難しくて
ヨン:龍顔(王の顔)の無断使用にも飽き足らず、私生活まで?
ラオン:最後まで聞いてください。
そんな世子様がいろんな経験を通してこの世にまたとない
聖君に生まれ変わるという、そんな内容です。
ヨン:お前の願いを書いたのか?
ラオン:いいえ、殿下が作られる世界を私がちょっと覗いてみただけです
ヨン:お前は誰だったかな?
ラオン:殿下の作られる世界の最初の民のことですか?
思いがけず内官の姿で殿下の側にいった最初の恋人?
それなら、私は誰でしょうか?
ヨン:お前は、私の世界を一杯に満たしたラオンだ
ドラマシーン↓
<ロケ地情報>
このコスモス畑は
忠清南道 扶余郡 扶余邑 旧校里(충청남도 부여군 부여읍 구교리)にある
クドゥレ彫刻公園(구드래조각공원)やクドゥレ船着場(구드래나루터)付近にあるそうです。
本当に童話のように悪い人が全部いなくなって、「二人はいつまでも幸せに暮らしました。」というエンディングになりました。
「雲が描いた月明かり」をパク・ボゴムさんが演じると決まってから、原作小説を読み、大きな期待を持って視聴し始めたドラマ。どうしても原作小説との比較をしてしながらの視聴になりましたが、最初は軽いテンポ、小説とは違う人物設定、小説のエピソードを利用しつつもまた違った物語になっていく展開、そして何よりも、演じる俳優たちの演技力に魅了されながら、ドラマにすっかりのめり込んでしまいました。でも途中からは重苦しい展開とヒロインの無謀な行動に歯がゆさと残念な気持ちが強くなり、それでも希望のようなものを持っていましたが、最後は広げた風呂敷をささっと片付けたようにあっけなく終わってしまいました。
きれいなエンディングを見せられても、しばらくは取り残されたような気持ちでいましたが、時間が経つとともに、それからこの記事を書くことでも色々整理できたように思います。
最後のラオンの立場が具体的には明らかになりませんでしたが、時々ものすごく曖昧な所で、突然後はご想像にお任せします!という終わり方をするドラマもある中で、一応それぞれに結末を見せてくれたことは良かったと思います。最初から人物設定が違っていたので無理だったかもしれませんが、小説の結末を実写でも見たかったなあというのが本音ですが。
小説がホン・ラオンの物語だとすれば、ドラマはパク・ボゴム演じるヨンの物語でした。このドラマで一気に大スターになったボゴムさん。これからの活躍も見守っていきたいと思います。
他にもこのドラマに出演したすべての俳優さんたちが、今後も最後に出てきたコスモスの花道のように美しい道をまっすぐに歩んでいけますように。
そんな願いを込めて私のレビューも終えたいと思います。
画像:[雲が描いた月明かり]現場スチール
画像:[雲が描いた月明かり]現場スチール
画像:[雲が描いた月明かり]現場スチール
KBS2TV「雲が描いた月明かり」公式HP↓
韓国KBS2TVで2016年8月22日~10月18日に放送されました
画像出処:KBS2TV「雲が描いた月明かり」画面キャプチャー