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証言・フルトヴェングラーかカラヤンか [読書]

証言・フルトヴェングラーかカラヤンか (新潮選書)

証言・フルトヴェングラーかカラヤンか (新潮選書)

  • 作者: 川口マーン 惠美
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2008/10
  • メディア: 単行本
読書というカテゴリーを作りました。

ここではどんな内容だったか後で振り返りたい時の覚え書きとして印象に残った本のことを書いておこうと思います。

と言いつつも、やっぱり最初は「ベートーベン・ウイルス」関係です…。

韓国ドラマ「ベートーベン・ウイルス」を視聴する前から指揮者という存在が謎でした。ドラマを視聴して、ますます指揮者について興味を持った所にこんな本が目に飛び込んできました。

『証言・フルトヴェングラーかカラヤンか』裏を返すと、こんな言葉が…
『ベルリン・フィル全盛時代の楽員たちが、初めて語ってくれた本格的インタビュー集。ドイツ精神主義の化身・フルトヴェングラーと、飽くなき音響美の追求者・カラヤン。共同作業した音楽家でなければ分からない二大マエストロの秘密を、臨場感溢れる語り口で解き明かす。音楽ファンならずとも惹き込まれること請け合いの一冊。』

これはもう読まずにはいられません。
カラヤンはドラマの主人公「カン・マエ」のモデルの一人ですし、『マウス・フィル』と違って、超一流のオーケストラであるベルリン・フィルの団員達から見たマエストロってどんな存在だったのか、読む前からわくわくしていました。


それまでの私は、例えばベートーヴェンの交響曲を聴くと、「ああベートーヴェンは偉大だ~」という感想は持ったものの、指揮者や楽団による音楽の違いについてあまり関心を持っていませんでした。
しかしフルトヴェングラーとカラヤンは、素人の私でもはっきりと違いを感じます。

著者の川口マーン惠美氏の言う二人の音楽の印象(フルトヴェングラーの不正確だが、絢爛豪華な城のような美しさとカラヤンの一ミリの歪のない工業製品のような美しさ)は私が感じたことがそのまま言葉に表現されていて、ますます気をよくして読み進め、あっという間に全部読み終えてしまいました。

インタビューに応じた元団員達の話は楽しくて興味深いことばかりでした。
特にカラヤンの評価については同じ人物のことなのに、団員によってまるで話が違っていて驚きました。この違い、例えば、円柱の物体を真上だけから見た人は「これは円形だ」と言い、真横からだけ見た人は「これは四角形だ」と言うのと同じようなものでしょうか。

韓国ドラマ『ベートーベン・ウイルス』の視点から読むと、また楽しい発見もありました。

カラヤンとカン・マエ、似ているようで、似ていない二人です。
気難しいカラヤンのようでも、団員やその家族が病気になると自分のコネを利用して医者を紹介してくれたそうです。カン・マエもルミに友人の医師を紹介していましたね。
また、ドラマの第4話でオケの練習中、カン・マエがフルートに高音の弱音を出すアドバイスをしていましたが、同じようなエピソードとしてカラヤンも練習中に『これ以上弱く吹けない』というフルート奏者に対し『私を信じなさい。あなたはもっと弱く吹ける』と言い、その通りできたという話があったそうです。

カラヤンは自分の体調の悪さを絶対に人に言わずに指揮をしたそうですが、この点は第10話のカン・マエもそうでしたね。
カラヤンは機械好き、新しい物好き、録音好き。それに対してフルトヴェングラーは大の録音嫌い。この点ではカン・マエはフルトヴェングラーに似ていますね。
そうそう、本書には、もしかしてこの方もカン・マエのモデルかと思われるチェリビダッケの話も時々出てきました。団員たちにとってはリハーサルが厳しすぎるのでフルトヴェングラーの後任には真っ平ごめんと言う感じだったそうです。

カラヤンは絶対音感を持っていたそうですが、カン・マエは違いました。
指揮者や演奏家で作曲をする人も多いようですが、カラヤンは作曲をしませんでした。カン・マエは作曲はどうだったのでしょうか…なんとなく、作曲は苦手そうな気がします。

カラヤン嫌いで知られる団員の一人は『カラヤンの演奏には感情がない』と言い切っていましたが、これは「カン・マエ」の一般的な評価と同じですね。
別の団員はカラヤンの後任のアバドに対して「彼の音楽は、正確ではないかもしれないが、本能やひらめきがある。」と語っていました。なんだかゴヌのようです。

それか
ら、フルトヴェングラーは晩年難聴に苦しんでいたようです。音楽家にとって大切な聴覚。聴こえなくなっても、活動を続けたベートーヴェンやスメタナ、そしてドラマでのトゥ・ルミと違い、フルトヴェングラーの最後の指揮の話は悲しかったです。

他にも様々な興味深い話が書かれていて最後まで楽しく読めた一冊でした。


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真琴

いつもありがとうございます♪

上記のご紹介を拝読してフルトヴェングラー指揮ウィーンフィルのCDを聞いてみることにしました。私にとって、ベバを見るまでのベートーヴェンは音楽室にかかっている怖い顔、気性の激しい厳格そうな、堅苦しい感じの人、第九と運命というなんかどきっとする曲、の作曲者でしたが、花かんざしさんの影響で少しづつ聞くようになったら、静けさや美しさ、繊細な感情の高ぶりのある曲をたくさん作った人なんだなあ、と印象がかなりかわりました。それから、即興でピアノをたくさん弾いたそうですね。 カンマエとだいぶ違うなあ、と思います。今聞いてる交響曲第1番、と第4番も前述の2曲よりも好きな曲です。
指揮は・・・、もちろんなにもわかりません(笑)私の場合、聞く時間をつくれるだけでも奇跡なので、ただ、音楽に包まれるだけです。

自分にとっての指揮者のイメージは佐渡裕さんと、小澤征爾さんです。小澤さんはカラヤンとバーンスタインの弟子なんですよねで、佐渡さんはバーンスタインの最後の弟子。それが音楽的になにをしめすのか、私にはなんにもわかりません。ただ、このお二人から感じられるイメージは、誰に対しても気さくで同じように接し、慈愛にみち、おおらかで、人間がきっとすごく大きいんだろうな、という感じです。指揮をしてる姿、とくに佐渡さんは踊ってるみたいで楽しそうです。 カンマエとはだいぶ違いますよね。 キャラとしてカンマエ大好きですが、自分が団員なら、困る存在なのだろうなあ、と思います。
by 真琴 (2009-07-14 18:30) 

花かんざし

真琴さん、こんにちは♪
コメントありがとうございます。
クラシックの世界がますます広がっているご様子、何よりです^^

フルトヴェングラーのCDはベートーヴェンの5番、7番、9番を聴きましたが、それまでに別の指揮者の演奏をいろいろと聴いた後だったので、最初はとても違和感がありました。当時の録音技術の問題なのか、音質とテンポがとても不安定で。。。でも、上記の本を読んで、少し納得しました。
1951年のバイロイト音楽祭のライヴ録音の第九は名盤と言われていますが、よくわかりません(苦笑)

ベートーヴェンですが、私には映画「敬愛なるベートーヴェン」の強烈なイメージが強いせいか、外見はカン・マエとは随分違うなあと感じています。
音楽は好きですよ。妙な比較ですが、モーツァルトよりも断然ベートーヴェンの方が好きです。

指揮者。100人近いオケの中でただ一人音を出さないで全体をまとめるなんて。全員の集中力を自分に集め、一つの音楽を紡ぎ出していくわけですから、凄いですよね。演奏者との信頼関係も大切でしょうし。
ソ・ヒテ教授もどこかで、カン・マエのような毒舌は現代では通用しないともおっしゃっていました。
豊富な知識と経験を兼ね備え、大らかで広~~い心の持ち主で、さらに人間的にも懐の深い…だからマエストロ(巨匠)と呼ばれるのですよね。

by 花かんざし (2009-07-15 10:34) 

真琴

こんにちは♪

17日のお言葉ありがとうございます♪
16日が幼稚園の夏祭りでした。古いバージョンのドラえもん音頭を一緒に踊りました〈笑)これからも、祭りが目白押し・・・私はいきたくないんですが・・・子供たちが・・・・。

映画「敬愛なるベートーヴェン」見ました。 興味深かったのですが、
あれ?もう?みたいな終わり方にちょっとびっくりしました。
花かんざしさんのおっしゃるとおり、かなり強烈なキャラですね。
主人公二人の心理描写だけで、もう少し長くひっぱれそうな気も
しましたが・・・・・・。 
導入から第九までの表現の仕方はおもしろかったです。

それで、今、「大フーガ」クレンペラー指揮、フィルハーモニア管弦楽団
を聞いています。 席をたつほど耳障りな曲ではないですね。。。。
wikを読んでもフーガが理解できない私ですが、完全に聴力を
失って、曲が書けるなんてただすごい、と思うだけで・・。
作曲といえば、必ず、映画「アマデウス」のシーンが浮かぶのですが、
あんな風に想像した音が音となって頭の中を流れるなんて、
やっぱり、凡人には想像だにできません(笑)。
自分ができることといえば、wikの指揮者の人物情報に爆笑
することくらいです。

ところで、Seoul Drama Awards 2009の投票に毎日1回の私です。
もちろん、ベバ、ミョンミンさん、イジアさん、の三セットで。
そういえば、ミョンミンさん、ytでCF撮影時の姿見れるようですね。
だいぶ回復されたようですが、まだ、お姿見るのがちょっと辛いです。
カンマエを演じられてたとき、かなり恰幅がよかった(でもウエストは
細くて、わりと腰浅のズボンでしたが)ので。

花かんざしさんも暑さに負けませんようにご自愛くださいませ。
by 真琴 (2009-07-18 14:31) 

花かんざし

真琴さん、こんにちは♪
コメントありがとうございます。

>映画「敬愛なるベートーヴェン」見ました。
おお、ご覧になったのですね。
実際の第九の初演時のエピソードはこのブログでも「about クラシック」の第九の所で紹介いたしましたが、この映画の架空女性との第九初演のエピソードも興味深かったですね。

Seoul Drama Awards 2009の人気投票。もちろん先日から毎日していますよ。
既に皆さんご存知のことだろうと思って、特にUPしていませんでしたが、せっかく話題に出していただいたので、私のブログでもニュース記事翻訳と投票サイトの紹介記事をUPしますね~。

by 花かんざし (2009-07-18 15:32) 

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