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怖い絵 [読書]

怖い絵

怖い絵

  • 作者: 中野京子
  • 出版社/メーカー: 朝日出版社
  • 発売日: 2007/07/18
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)

前に「怖い絵2」を読んでいたので、すんなりと読めました。
まえがきには
『……特に伝えたかったのは、これまで恐怖と全く無縁と思われていた作品が、思いもよらない怖さを忍ばせているという驚きと知的興奮である。……』(p.9)
とありましたが、本書に取り上げられた作品も、本当に怖ろしい場面を描いているものから一見ごく普通の絵に見えるものまで扱っていて興味深いものばかりでした。


ルドン キュクロプス160.jpg




ルドン『キュクロプス』
18981900年、油彩、64×51cm
クレラー=ミュラー美術館所蔵

 


オディロン・ルドンの「キュクロプス」の絵は実際に見たことがありました。
たしか学芸員さんの解説つき見学ツアーに参加したのでした。でもその時にはこの絵が怖いという目では見ていませんでした。ただ、この一つ目巨人が強烈で、画面いっぱいが目玉のような記憶だったのに、今回の絵をみると意外と小さかったことに気が付きました。

ルドンの晩年の作品は色彩がとても美しいのですが、別の作品の前で学芸員さんが本物と同じ色をポスターで再現することがとても難しくて苦労したとお話されていたことや、実際の絵とポスターを比べた時確かに色が全然違っていた事も思い出しました。

話が横道へそれましたが、作者のルドンは幼い頃里子に出され、母親から離れて成長したことが作風に影響しているそうです。この作品はルドン58歳の時の作品で、本書には
『傷ついた心を癒すのにいかに長い時間を要したか、深い感慨を覚えずにはいられない。』(p.88)
とありましたが、歪んだ愛…確かに怖いです。

 

ラ・トゥール いかさま師200.jpg




ラ・トゥール『いかさま師』
1647年頃、油彩、106×146cm

ルーヴル美術館所蔵

 

 

最後に紹介されていたのが、この本の表紙になったラ・トゥールの「いかさま師」でした。
韓国にも同じタイトルのドラマや映画があるのですが、どこの世界も同じですね。ここでの怖さは、周囲で起こっていることに若者が一人だけ気付いていないことはもちろん、もしかしたら自分もそうかも?と気づいた時こそ本当に怖さだと書かれていました。

この絵の作者ラ・トゥールですが、画家というより強欲な金貸しのような人物だったようです。大変な時代に財産を守り抜くため人間不信にでもなったのか、本書の最後はこんな言葉で締めくくられていました。

『一番恐ろしいのは天変地異でも幽霊でもなく、生きた人間だと肝に銘じた者にしか、『いかさま師』のぎろりとした横眼が描けなかったのかもしれない。』(p.245)


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