SSブログ

【コラム訳】砂漠の膀胱ゴビ - NORAZO<お前の運命だ> [NORAZO ニュース記事 2015年]

今回は音楽と旅行が好きでNORAZOの大ファンという小説家のパク・サン氏がNORAZOの「お前の運命だ」MVから回想したモンゴルでの摩訶不思議な体験を書き綴ったコラムを日本語に訳してみました。NORAZOのインタビュー記事とは違いますので、NORAZOの直接的な話は出てきませんが、とても興味深く面白い内容だったので拙い訳ですがご紹介いたしますね。
  
コラム>音楽>パク・サンのターンテーブル

砂漠の膀胱 ゴビ
NORAZO<お前の運命だ>

NORAZOはこれまで俺の人生を泣き笑わせる音楽を作ってきた。音楽だけでもかなり好きだが、恐るべきミュージックビデオもまたこうして立派な前衛芸術を満喫させてくれる。NORAZOの音楽を全部そろえてからパーッと広がったモンゴルの草原にもう一度行きたい。

文、写真 パク・サン(小説家) 2015.03.03

s150303記事写真1.jpg 
 
NORAZOの「お前の運命だ」を初めて聞いた瞬間に思い浮かんだことがあった。数年前よく当たるという占い師に出会った記憶だった。友達の知りあいの知りあいのよく知らない人なのだが、なぜか全てのことを当てると言った。俺とたまたま偶然の席で酒を飲むことになった彼は、凡庸でない暦学の知識と予知力と直感力を持っているに違いない目つきと意気込みで俺にきっぱりと断言した。

「トイレに行きたくなると我慢できないでしょ?」

俺はその瞬間思わず吹き出した。失礼だったが随分笑った。いやはや尿意を催しているのに誰が我慢すると?よく当たるという人がよくもそんなことも当ててくるとは。

そんなことがあってしばらくした後、俺は企画プロジェクトでモンゴルに旅行したが、その占い師の言葉を新たに思い起こさなければならなかった。場所はゴビ砂漠の真っただ中にある万年氷の神秘的な渓谷「ヨリン・アム」だった。馬に乗ってしばらく行って渓谷の入口に進入した時、俺はツアーを率いるモンゴル人ガイドに聞いた。

s150303記事写真2.jpg
 
「あの、急にトイレに行きたくなったのですが、ここでも自然を利用していいですか?」

ガイドはすぐに真顔になった。

「いいえ!決してしてはいけません。ここで用を足すとひと月以内に死にます。ここはとても神聖な場所なのです。」

ゴビ砂漠とモンゴル草原で大自然以外のトイレを使ったことがほとんどないというのは冗談なのかと思ったが、彼の表情はまったく真剣だった。前の日の夜一緒にウォッカを飲みながら果てしない低俗冗談レースを張り合っていた時とは正反対の態度だった。

「え?本当に死ぬのですか?」

「はい、ここは山羊が次の世界へ行く場所です。以前あるヨーロッパの観光客がここで用を足して行って帰りに飛行機が墜落したそうです。」

「ええっ、そんな!」

尿意がきゅっと引っ込んでいった。しかしその渓谷には空のペットボトルや煙草の吸殻がたくさん捨てられていた。あのようなものを捨てた人は大丈夫なのかという疑問が湧いた。実は尾根に山羊のシルエットのような岩が見えること以外には神聖さとは程遠いように見えた。ただの大自然に過ぎず、動物は全てがそこで用を足すのに、人間だけ規制するとは、シャーマニズムを理解できなかった。それに命に係わるほど重要な事なら渓谷に入る前に事前に知らせるべきではないかと思ったが、俺は大人しく我慢することにした。ところが先に紹介したその笑える占い師の言葉がにわかに思い出されて膀胱に無限反復されるではないか。

トイレに行きたくなると我慢できないでしょ?トイレに行きたくなると我慢できないでしょ?トイレに行きたくなると我慢できないでしょ....

クソ!なんだよこれ。俺は執拗な尿意を忘れるためスマートな都会の人間らしくイヤホンをつけて音楽を聞きながら歩いた。ところが再生リストからエルヴィス・コステロの<She>が流れてきた。ああ、どうしてよりによって。その音楽を聞いた途端、急に尿意を我慢できなくなり気が狂いそうになった。長引かせる問題ではなかった。普段はそうでないのに、どうしてこのことをその都度解決しないと困る人になるのかわからなかった。理由も分からないだろうし、ガイドについて渓谷の中まで入って行く間、俺は膀胱が破裂しそうな苦痛に悩まされた。そして精神が混迷した状態で渓谷を渡る時、足を踏み外して靴が氷のような冷たい水にはまってしまった。

「おや大変、足が冷たいでしょう。乾かしてゆっくり来て下さい。氷の渓谷はあの角の先にあります。私たちそこで待っていますね。」

ガイドが言った。感覚がないほど足がしびれた。一行が俺の視野から消えると俺は靴を脱いで靴下を干した。ところで構造的にちょうどいい具合に奥まった岩の隅が見えるではないか。用を足さねば。ああ、俺は申し訳ないがそこで問題を解決することに決めた。そして「申し訳ございません。どうか一回だけご慈悲を、神聖な場所でズボンに用を足した後泣きわめく訳にはいかないじゃないですか。」といいながら、ジーパンのボタンをはずした。

「ああ、用を足してようやく生き返る。」

そんな笑えない語呂合わせが思い浮かぶほどすぐに苦痛から解放された。正常な人格に戻った俺は痕跡を残した場所に対して文明人としての羞恥心を感じ、手で渓谷の水をすくっては何度か岩のすき間を洗い流した。手が凍えて死ぬかと思った。あ、ところでその渓谷で不思議なことに濡れた靴下がすぐに乾いた。俺が用を足した場所も数分後には跡形もなくきれいになっていた。そんな場所で渓谷の水がどうして乾くのか驚くばかりだった。非常に乾燥した場所か、非常に神秘的な場所に違いなかった。そんな神聖な場所でやらかしたのでガイドが言った「死」という言葉が脳裏にくっきりと浮かんだ。

「ふん、人間はいつか死ぬのだ」そんな独り言で怖ろしさを懸命に振り払おうとするしかなかった。

その日の晩ゲル(遊牧民の移動式の家)で寝ていたのだが虫の襲撃を受けた。変な感じがして目覚めると俺のゲルの中に真っ黒の蛾の群れが飛び回っていた。蛾は羽ばたきで一様に俺をとがめるようだった。果てしない草原のどこからこんなにたくさんの蛾が飛んできたのだろうか。これが祟りの始まりなのか。俺にとってゴキブリの次にぞっとするのが蛾なのでびっくり仰天してゲルのドアを開けて飛び出した。どうりで木の扉がやわらかいと思ったらそこに蛾がびっしりとはり付いていたのだった。うわああ~~手をはたいて真っ暗な中へ走った俺は自分の足に引っ掛かって倒れた。顔を保護するため本能的に手をついたのだが、前に何かがあるようだった。ライターを点けてみたら三角にとんがった角だった。手を突いていなかったら、俺の走った速度の慣性と倒れる重力を合わせた力でその角が眉間をぶすっと刺しただろう。どうして砂漠にそんなのが立っていたのか?どうしてよりによってそこで転んだのか?不思議で恐ろしく身の毛がよだった。祟りのせいなのか蛾の鱗粉のせいなのか、顔を突き刺すところだったせいなのか、次の日俺は目に大きなものもらいが出来てしまい、片方の目を開けることもできず目の周りにあざを作った状態で残りの日程を過ごさなければならなかった。どうにも自分でコントロールできないことが俺に起きているようだった。

s150303記事写真3.jpg
 
実際、禁止された場所での放尿という重大な過ちをしでかしたから苦難を受けて死んでも恨みはないようだった。ただ恐ろしくて死にたくなかった。恐怖を克服するものが必要だった。俺を助けてくれるのはやはり音楽だけだった。持ってきた音楽は数曲しかなかったが、その中でエルヴィス・コステロの<She>を聞くと不思議と何度もトイレに行きたくなる症状が繰り返された。不思議だったが「シ~」というたび可笑しくて死や祟りの恐怖が気にならなくなった。可笑しくてもきまって単純に膀胱や放屁のようなもので笑える自分の運命がため息交じりの苦笑を誘うのだった。よくよく考えると、俺が楽しいことがとても好きで生きていたあまり、笑う時に膀胱に力が入って容積量がだんだん小さくなるのかなと推測したりした。そんなとんでもない考えをするほど自分が死を恐れていたのがよけいに滑稽だった。

…ああ、とにかくあれからもう3年が過ぎた。こうしてコラムを書いているところをみるとまだ死んでないし、あの時を思うと今も心の片隅がぎこちなくヒヤッとして、よその国の神聖な場所に用を足して申し訳なく思う。俺が冷たい谷の水をすくって水洗式で後始末をちゃんとしたため霊験な「ヨリン・アム」が大目に見てくれたのかもしれない。

とにかくエルヴィス・コステロの甘い音楽がそのためしばしば滑稽に聞こえるのが残念なだけだ。それで今日のテーマ曲はエルヴィス・コステロでなく少し前に新作ミュージックビデオで我々を衝撃と恐怖に陥れた「NORAZO」の話だ。「お前の運命だ」このミュージックビデオを見た人は知っているだろうが、一体何なんだこれは?という感情から出発してクスリをやった?ついにイカレたのか?などなどの感情が流れ出るのを感じる。そして俺のような熱狂的なファンは挙句の果てにこの音楽を無限にリピートして春を待つようになった。

NORAZOはこれまで俺の人生を泣き笑わせる音楽を作ってきた。人生を生きるのが苦しいと感じる時「兄」を聞くと毎回涙がほろりとこぼれて、「ロックスター」を聞けば涙がじゃあじゃあ出て、「スーパーマン」、「サバ」など彼ら特有の奇怪で愉快でロックスピリッツに満ちた前衛的ヒット曲を聴くたびにスッキリとするし、最も好きな曲の「屋台」を屋台で聞きながら莫大な借金を抱えている自分をなだめたりする。彼らがベートーヴェンの「運命」交響曲をサンプリングした今回の新曲は、俺にとって俄然よく当たる占い師のように語る。

「胸を張って 肩を開いて シャキッと背筋を伸ばす人生 これがまさしく お前の運命だ あ~大当たり 特等賞 また大当たり 心配は犬にでもくれてやれ」

「トイレに行きたくなると我慢できないでしょ?」に比べるとああ、これはどれだけ美しい予言であることか!俺がNORAZOのファンなのは運命のようだ。音楽だけでもとても好きなのに、恐るべきミュージックビデオもまたこんなに素晴らしい前衛芸術を満喫させてくれた。どれほどうっとりするボーナスであることか。(暗示にかかるかもしれないが) NORAZOが日ごとに変人度を増して存在感を誇るほど、大衆音楽の食傷気味な一本調子に失望を覚える俺はNORAZOのことがものすごくとっても好きだ。




記事原文↓

(日本語訳:花かんざし)

◆単語ノート◆
・가공(可恐/カゴン)…恐るべきこと
・용하다(ヨンハダ)…腕前が優れている、上手だ、腕がいい、器用だ
・직관(直観/チックァン)…直感
・딱 잘라(タク チャルラ)…きっぱりと
・상기(想起/サンギ)…思い浮かべる、思い起こす、思い出す
・정색(正色/チョンセク)…改まった顔つき、真顔
・사뭇(サムッ)…もっぱら、思いっきり、全く、全然、ひたすら、ずっと、ひどく
・불현듯이(プリョンドゥシ)…にわかに、突然、ふと、だしぬけに
・헛디디다(ホッティディダ)…踏み外す、踏み違える
・울고불고(ウルゴプルコ)…泣きわめく
・뇌까리다(ノェカリダ)…意味のない言葉をくりかえす くどくど言う、愚痴をこぼす、ほざく、ぬかす
・나방 가루(ナバン カル)…鱗粉
・거룩하다(コルカダ)…神聖だ、神々しい
・다래끼(タレキ)…ものもらい、麦粒腫
・일차원적(一次元的/イルチャウォンジョク)・・・直接的で単純なこと
・나머지(ナモジ)…~あげく、~あまり
・급기야(及其也/クプキヤ)…挙句の果てに、遂に、とうとう、結局
・똘끼(トルキ)…또라이(トライ/変わり者)の気がある人

◆ちなみにエルヴィス・コステロ(Elvis Costello)の 「She」はこんな曲↓
映画「ノッティングヒルの恋人」の主題歌として有名ですね~
しかしこの文を読んだ後は何度も繰り返される「She~」に思わず笑ってしまいます。


◆NORAZOのCFソングも例によって貼っておきます

最近企業からこんな↓反応があったようです~
~チョビンのSNSより~


【日本語訳】私どもの「お前の運命だ」『CMソングを歌おう』をご覧になって面白いコンテンツが本当に良かったと私どもが日頃食べているマックスボン(チーズかまぼこ)、スパム(缶ハム)などなど多くの食品を送って下さいました~~!私どもが歌詞に入れなかったのに...さすが文化と芸術を愛する寛大なCJ~~^^ 美味しくいただいて頑張ってより面白いモノを混ぜて混ぜて混ぜて皆様を楽しくしてあげますから~~家に帰って(ビビゴ)王餃子を食べないと~!


【日本語訳】おや、今回はハイト眞露よりお礼だといって天使IU嬢を通して透明で濃い幸運の気を机の脚が曲がるほど送って下さいました~~! 近いうちに会社でピクニックに行かないといけないようです~~!愛のメッセンジャーハイト眞露~~ありがとう愛しています~~^^
 
NORAZO「お前の運命だ」CMソングより 
お前の運命だCMソングHiteビール-vert.jpg
CMソングではHiteビールを紹介していましたが、IU嬢が専属モデルを務める「チャミスル」も一緒に届いたようですね~「机の脚が曲がるほど」というのはテーブルにご馳走を沢山並べてお客様をおもてなしする時によく使われる表現ですが、本当に机の天板がしなる程沢山届いたようですね♪


nice!(1)  コメント(1) 

nice! 1

nice!の受付は締め切りました

コメント 1

コメントの受付は締め切りました
花かんざし

hitominさん、nice! ありがとうございます^^
by 花かんざし (2015-06-15 18:09) 

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。