SSブログ

映画「明日へ」(原題:카트/Cart) [【韓国ドラマ】錐]

現在韓国JTBCで放送中のドラマ「錐」を視聴しながら、あれこれ記事を読んでいるとよく出てくる映画「カート」という言葉。「錐」も「カート」も韓国の大型スーパーで実際に起こった労働闘争をモデルとしているということで、映画の方も気になっていたところ、タイミングよく映画「カート」が「明日へ」というタイトルで上映中だと知り、早速観てきました!

上映前にド・ギョンスさんより日本の皆さんへメッセージ映像がありました。あら、この人確かEXOのメンバーでドラマ「괜찮아, 사랑이야/大丈夫だ、愛だ」に出演していた人だわ~。どうりで客席に若い女性が多いはず^^ ちょうど一年前に公開された映画がこうして日本で上映されるのもそのためかしら。

sポスター.jpg
    
さて、なるほど「錐」を見ると「カート(明日へ)」を思い浮かべる人が多いはず。どちらも実話を基に再構成した物語であること、そして大型スーパーが舞台で、そこに勤める非正規従業員の大量解雇という事件が発端となり、その後従業員たちが労組を結成し会社側と対立していくところなど共通項が多いのです。さらに出演者には「錐」、そして「錐」とよく引き合いに出されるWeb漫画原作の大ヒットドラマ「未生(ミセン)」の登場人物もちらほら姿を見せるのですが、大体役柄が似通っているので、よけいにそう思えます。

映画には「錐」に登場するような労組を引っ張っていく若い男性社員も登場します。チ・ヒョヌ演じる青果担当課長イ・スインというより、ヒョヌ演じる青果担当主任チュ・ガンミンのような人物。ただし、「錐」の労務士ク・ゴシンのようなアドバイザー的な人物は登場しませんでした。なので「錐」のような労働法に関する勉強会シーンはありませんでした。ただ労組の委員長の台詞の中に「労務士に相談する」というのが出てきた位でした。他にも映画ファンにはおなじみのベテラン俳優たちが出演しているので演技面で申し分ない作品でした。

ここで主な出演者&気になる出演者リストです<Naver映画より抜粋>

염정아(ヨム・ジョンア) 선희 역(ソニ役)
문정희(ムン・ジョンヒ) 혜미 역(ヘミ役)
김영애(キム・ヨンエ) 순례여사 역(スルレ女史役)
김강우(キム・ガンウ) 동준 역(ドンジュン役)
도경수[디오](ド・ギョンス)태영 역(テヨン役)
황정민(ファン・ジョンミン) 옥순 역(オクスン役) *錐:水産パートファン・ジョンミン役
천우희(チョン・ウニ) 미진 역(ミジン役)
이승준(イ・スンジュン) 최과장 역(チェ課長役) *未生:サムジョン物産のシンチーム長役
지우(ジウ)  수경 역( スギョン役)
김희원(キム・ヒウォン) 편의점사장 역(コンビニ店社長) *未生:パク課長、*錐:チョン部長役
김가영(キム・ガヨン) 계산원17 역(レジ係17役) *未生:営業2課チャン・ミラ役 
이정은(イ・ジョンウン)  계산원1 역(レジ係1役) *錐:青果パートキム・ジョンミ役

smovie_image.jpg

「錐」のいつも元気なパート主婦さんが映画にも登場していました。そして「未生」でチャン・グレの隣の課にいた女性職員さんも映画の非正規職員たちの中にいました。
特別出演のキム・ヒウォン氏は「未生」「錐」「カート(明日へ)」ともにアクの強い役でご出演です。「星から来たあなた」では熱血刑事だったのですが、すっかり悪役のイメージが。
「未生」でアン・ヨンイの元上司だったシンチーム長は映画では会社側の人間で登場です。

原題「カート」のカートはスーパーによくあるショッピングカートのこと。映画の主人公であるパート従業員たちを象徴しているのでしょうか。スーパーの店内、店外の至る所で見かける買い物に便利な道具として目に映る、そのカートを何台も重ねることで盾にも武器にもなるのと同様に、普通のパートの主婦たちも一人では無力な存在にすぎないけれど、団結することで大きな相手と対峙できるようになるということなのでしょうか。

映画はヨム・ジョンア演じるソニとその家族の物語を中心に、普通の主婦の視点から描かれています。いつかは正社員になれるという夢を抱いてどんなつらい仕事にも歯を食いしばって耐えてきた主婦たちが、ある日突然解雇されるという事態に、怒りを爆発させるところから物語が動きます。特に主人公ソニはせっかく正社員に手の届く所まで来たのに、無かったことになってしまいます。また契約期間がまだ数か月も残っている従業員も多くいるのに掲示板の貼り紙と各自へのメールで解雇が一方的に通達されてしまいます。

これは2007年に韓国のイーランド・グループが経営する大型スーパーホームエバーのワールドカップ店で実際に起こった出来事。2年以上勤務した常時雇用者を正規職へ転換させる非正規職保護法の施行前にイーランド・グループがレジ係を外注するため非正規従業員を一方的に大量解雇したことで非正規職の組合員約600名が店舗でストライキをした事件が映画の下敷きになっているとのこと。

ちなみに「錐」のモデルになっている大型スーパー「カルフール」は2006年にイーランドが買収して「ホームエバー」という名称になり、更にその後2008年に英国テスコが買収して「ホームプラス」という名称になり、そして今年9月に韓国最大の私募投資ファンドMBKパートナーズが買収したそうです。

映画では解雇の通知を受けた主婦たちが集まって労組を結成します。この時のリーダーは以前も解雇された経験があるから、他の主婦たちよりも労働法に詳しいようです。映画では「錐」とは違って皆わりとあっさり組合加入届に署名と拇印を押します。主人公も一瞬ためらいますが書類を記入、その後代表者の一人に選ばれてしまいます。その後どうにも交渉に応じない会社側の態度に、ついに組合員たちが店舗のレジ台を占拠して立てこもります。

レジとレジの間のスペースに段ボールを敷いてベッド代わりにしたり、色々なものを持ち寄って皆で煮炊きをしたり、飾り付けをしたり、寸劇を披露したりして徐々に仲間意識が強まっていく、ちょっと楽しげな雰囲気のする場面では、何か違和感を覚えましたが、同時にそこに人間のたくましさのようなものが垣間見えました。腹が減っては戦はできぬということでしょうか。

たぶん参加したパートの主婦たちもこの時点ではあまり危機感もなく、本気を見せればすぐ解決できると思っていたのでしょうか。しかし現実は冷酷でした。実話では最終的に510日間も闘争続いたそうです。映画後半の主人公の「私たちの叫びを聞いて下さい。私たちは透明人間ではありません。私たちも人間らしく働きたいのです。」という台詞が非常に印象的でした。

日本語タイトル「明日へ」だと希望的で前向きなイメージがありますが、映画の中で主人公たちは確かな希望を見つけて前進する姿までを描いていたのかというと私には少し疑問が残ります。どちらかといえば、現実をリアルに描き出すことで、この映画を見る人々に多くのことを問いかけるような作品だったと思います。

先日ソウル中心部で起きた大規模デモ集会の報道を見てみると、この映画に描かれた社会は2007年頃のかつての韓国での出来事ではなく、まさに今日の韓国社会を映しているようです。更に日本に目を向けると、年々非正規雇用者の割合が増加しているなど雇用を取り巻く現状に、決して他人事ではない気がしました。

映画の最後には主人公ソニの高校生の息子テヨンを演じたド・ギョンスことEXOのD.O.が歌う「외침/叫び」が流れますので、ファンの方は必見ですね。

ポスター5.jpg

映画「明日へ」公式サイト↓

予告編↓
 

画像出処&映画情報(韓国語) ↓


nice!(0)  コメント(0) 

nice! 0

nice!の受付は締め切りました

コメント 0

コメントの受付は締め切りました

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。