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【記事訳】「錐」はよいドラマか [【韓国ドラマ】錐]

現在韓国のJTBCで放送中のドラマ「錐」は人気Web漫画をドラマ化した作品です。原作漫画をかなり忠実に再現しているそうですが、原作を知る人にとってドラマはどのように映るのでしょうか。漫画の方を知らない私にはちょっと興味深い記事でしたので日本語訳してみました。
  
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「錐(*송곳/ソンゴッ)」はいいドラマか

2015年11月16日
文:コ・イェリン
写真提供:JTBC
校正:キム・ヨンジン

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Web漫画「錐」の登場人物の一人であるムン・ソジンはサムジンの非正規職だ。しかし彼女は労働相談所所長ク・ゴシンが、非正規職の受ける不当な待遇について説明すると「他人が頑張っている時、頑張ってなかったせいだ」と言う。彼女が非正規職がどれほど不安定な位置にあるのかを分かるようになるのは、解雇指示を受けた後、労働組合の活動をし始めてからだ。労働組合は彼女にとって同意できない会社との合意案を受け入れることを要求し、彼女は「とんでもない」と腹を立てるが、「私たちに生活費をくれて闘争をサポートしてくれる所は金属(労組)しかない」と言って、非正規職労働組合のアンビバレンス(*相反する感情)を見せる。労働組合について描くWeb漫画というだけでも挑戦的だが、労働運動の様々な現実とそれに伴う人間の複雑な選択まで示している。更にはドラマ化されるほど人気も得た。Web漫画「錐」が傑作と称される所以だ。

JTBC「錐」はこのようなWeb漫画をほとんどそのまま持ってきたように見える。フルミマート課長のイ・スイン(チ・ヒョヌ)と労働相談所所長のク・ゴシン(アン・ネサン)は外見からして原作を3Dで表現したように感じる程で、原作のエピソードは勿論、台詞までほとんどそのまま持ってきた。Web漫画で不当解雇を受けた職員たちを放っておけず労働組合に飛び込んだイ・スインを置いて、「確かに一つくらいは突き出てくる。錐のような人間」と言っていた労働相談所所長ク・ゴシンのナレーションはドラマでも重々しく響いた。時にはそれぞれのシーンの隅までそのまま表現するほどWeb漫画を忠実に反映しているので労働運動という素材がはっきりと現れ、労働者の立場から見た不合理な世界に対する描写もWeb漫画と同じくらいに強力に迫ってくる。ドラマ「錐」は良作Web漫画をどのようにドラマ化するのかに対する一つの方向ともいえよう。

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しかし、変化したものがある。ドラマでムン・ソジン(キム・ガウン)はク・ゴシンの労働事務所で訪問者たちをコーヒーでもてなし、ク・ゴシンに冗談を投げかける大胆さが浮き彫りになった。またムン・ソジンが労組について持つ複雑な心情は、「同じ世界だと思っていたのに、別の世界だった。」というナレーションに代替される。原作では自分の置かれた世界について自覚しながら非正規職労働者の複雑な立場を見せていたキャラクターが、ドラマでは若くてきれいな女性として雰囲気に活気を与え、より感傷的な立場を取るのに変わった。小さな変化かもしれない。しかし人間と労働運動について複雑な脈絡がより単純で感性に焦点を置く方向へ反れていき、ドラマ「錐」は同じ物語でWeb漫画と微妙に違う方向へ行く。

フルミマートの主任ファン・ジュンチョル(イェソン)は協力会社から接待を受けた事実が会社に知られ、イ・スインがこれは彼を首にしようとするホ課長(チョ・ジェリョン)の計画であることを教えると、彼は闘う事を決心する。止めておけばそれなりの慰労金などを用意するという懐柔を拒んで出席した懲戒委員会で、原作のファン・ジュンチョルは懲戒委員会に一人で入りイ・スインに心配をかける。しかし彼は自分の携帯電話から証拠を見つけ、懲戒委員会で打ち勝った。ファン・ジュンチョルは「いい大学を出ず、ネクタイをしめなくても、自分の人生が大事なことは分かって」「各自の闘いを一緒にする」のだった。しかしドラマではファン・ジュンチョルがピンチに陥った瞬間、イ・スインが重要な証人であるカラオケのコンパニオンと一緒に入ってくる。証人の証言は結局採択されず、ファン・ジュンチョルが自ら証拠を見つけ出す場面に戻って、原作との流れを再び合わせるが、自ら自身の闘いを始めた組合員ファン・ジュンチョルの脈絡は省略される。その場に満ちていたのは、ファン・ジュンチョルを懲戒しようとするチョン・ミンチョル(キム・ヒウォン)部長が証人に浴びせる暴言だ。

Web漫画「錐」はイ・スインとク・ゴシンの魅力的なキャラクターを通して、読者が労働運動にやさしく接するように作った。一方ドラマ「錐」は労働運動のプロセスが二人のキャラクターの活躍を浮き彫りにする手段になったりする。至難な労働運動が少し実を結びながらドラマチックな面白さが作られるよりは、ドラマチックな面白さのため労働運動のプロセスが少しずつ違ってきている。「錐」が面白いドラマだと言うなら、確かにそうだと言えるであろう。しかしこの作品がWeb漫画のように現実の労働運動について悩んでいるのかは疑問だ。

「錐」が放送をスタートさせた時、制作陣は作曲家たちに正当な対価を支払わないまま、著作権を無断使用しているロイ・エンターテインメントのOSTを使用して論争に巻き込まれた。その後、制作陣がロイ・エンターテインメントと作曲家の間の話し合いを取り持ち、事件は最近進展を見せた。制作陣はこの問題と彼らが作る作品がどんな関係があるのか知らなかったのだろうか。そして今は何が問題なのか分かったのだろうか。それならば、これから続くドラマでもその認識の変化がもう少し現れるのだろうか。本当に気になるところだ。今の「錐」が出来る最善だったのかを。

記事原文↓

◆単語ノート◆
・양가감정(両価感情/ヤンカガムジョン)…アンビバレンス、両価感情、 一つの対象に同時に相反する感情を持つこと。
・지 인생(チ インセン)…自分の人生 지=自分の、自分自身 

日本語訳=花かんざし *印=訳者註


「未生」も人気Web漫画をドラマ化した作品で、昨年の今ごろは韓国中が「未生」に夢中になっていました。私もその中の一人です^^。よく「未生」は「ファンタジー」を描き、「錐」は「現実の社会」を描いている、というようです。

確かに、「未生」ではチャン・グレの囲碁の勝負師的な勘から繰り出す妙手によって形勢が逆転する痛快な場面もあり、上司部下の間の強い信頼関係が築かれていく様子や、新入社員4人の成長段階を追っていくのを見るのはどこかほほえましい部分もあり、チャン・グレを応援することが即ち自分自身を励まし慰めるようなドラマでした。未だ完全でない状態と言う意味のタイトル「未生」からして気持ちを奮い立たせるような力を与えてくれる気がします。

これに対して「錐」は、袋の中に入れておくと自然と袋を突き破って外に飛び出す鋭さで現在の社会問題を見つめシビアに描いています。台詞を完全に聞き取っている訳ではありませんが、毎回見終ると深いため息が出て、しばらく考えに沈むようなドラマです。

また記事の中にもありましたが、一時は背景音楽に関連して作曲家たちと音楽ライブラリー会社との問題がドラマにも飛び火して番組ボイコット運動というのまでありました。今は少し進展があったようですが…。

確かに見ていて楽しい気分になるドラマではありませんが、俳優たちの力強い演技は素晴らしいと思いますし、描いている世界もこれまでのドラマでは扱わなかった、でも日常生活で大切な労働者の権利を説明しているドラマです。全12話中8話まで放送されましたが、あと4話でどのような方向へ進むのでしょうか。視聴率面であまり目立たないのが惜しいのですが、最後まで視聴しようと思います。


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