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韓国旅行~延世大~番外編・尹東柱詩碑 [아름다운 시 (詩)]

先日、韓国ドラマ「アイリス」の1話を始めの30分だけ見ました。すると見たことのある場所が。ビョンホン氏とキム・テヒさんが出会った大学の場面。これは先日訪れた延世大学ではありませんか。どうりで私が訪れた時アンダーウッド館の前でたくさんの人が記念撮影していた訳ですね。今ごろ納得しました。

前置きはこのくらいにして今日の本題は、
尹東柱の詩「空と風と星と詩」より序詞です。

延世その6.jpg
先日の旅行記でも少し触れましたが、
かつて詩人尹東柱が学んだ延禧(ヨンヒ)専門学校、現在の延世大学構内に詩碑が建立されています。

戻ってから延世大の構内図をよくよく見たら、詩碑の後ろの建物は尹東柱記念室になっていました。もともとは東柱が起居していた寄宿舎だったようです。戻ってから気がつくことが多すぎ~~。

この詩碑に刻まれた言葉を拙い訳ですがご紹介いたします。

この詩碑は東柱の実弟、尹一柱氏が設計し詩人の自筆原稿の文字を拡大して彫ったものだそうです。

延世その13.jpg
하늘과 바람과 별과 (空と風と星と詩)서시(序詞)
윤동주尹東柱/ユン・ドンジュ)
 

チュンヌン ナルカジ ハヌルル ウロロ
죽는
날까지 하늘을 우러러
死ぬ日まで空を仰ぎ

ハンジョム プクロミ オプキルル
부끄럼이 없기를,
一点の恥のない事を

イプセエ イヌン パラメド
잎새에 이는 바람에도
木の葉の間に吹く風にも

ナヌン クェロウォヘッタ
나는 괴로워했다.
私は思い悩んだ

ピョルル ノレハヌン マウムロ
별을 노래하는 마음으로
星を歌う心で

モドゥン チュゴガヌン ゴスル サランヘヤジ
모든 죽어가는 것을 사랑해야지
全ての死にゆくものを慈しまなければ

クリゴ ナハンテ チュオジン キルル
그리고 나한테 주어진 길을
そして私に与えられた道を

コロガヤゲッタ
걸어가야겠다.
歩んでいかなければならない


オヌル パメド ピョリ パラメ スチウンダ
오늘 밤에도 별이 바람에 스치운다.
今夜も星が風にかすめられる。

     1941.11.20.
 東柱

詩碑の裏面には次の言葉が刻まれていました。
延世大その14.jpg

碑銘の草稿は柳玲氏が担当し、文字は書家の朴俊槿氏が書いたそうです。

尹東柱(ユン・ドンジュ)は民族の受難期であった1917年、独立運動の拠点北間島の明東に生まれそこで成長し1938年春、この延禧(*1)の丘を訪ね1941年に文科を終えた。
彼はまた日本へ渡って学業を続けながら抗日独立運動を繰り広げていた途中1945216日、日本の福岡刑務所でむごい刑罰により命を落とすが、この時の彼の年齢は29(*2)だった。
彼がこの丘を散策しながら書いた宝石のような詩は暗黒期の民族文学の最後の灯として同胞の胸に響き、彼の「こだま」「空と風と星」とともに道は終わらない。
ここに彼に従い慕う学生、知人、同級生たちが誠意を集め、彼の体温が宿るこの丘に彼の詩一篇を刻みこの詩碑を建てる。

  1968113
  延世大学校総学生会
 

*1訳者注:延世大の前身は延禧(ヨンヒ)専門学校
*2
訳者注:数え年で29歳、満年齢では27

まるで殉教聖人のような生涯だったようですね。常に心の中でもう一人の自分と対話するような詩。本当に純粋な心を持った人だったのでしょう。

美しい言葉で書かれた詩集「空と風と星と詩」の本も色々出版されています。私が読んだ本には詩の他に散文やノートに書かれていた言葉、そして年表や様々な資料なども紹介されていました。治安維持法違反の容疑で逮捕されてしまい、多くの作品が警察に押収されてしまったこと。また混乱の続いた韓国の歴史を思うと、100篇近い東柱の作品が奇跡的に残されていて今こうして読めることに感謝します。


タグ:韓国旅行
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まりこ

花かんざしさん こんにちは♪
私もアイリス観ました☆この大学だったんですね~!構内は大きそうでしたね。
尹東柱さんの詩をハングル読みまでつけて紹介してくださってありがとうございます。
私は実はフランス語にも興味があって、テレビで講座を見てもあまりの難しさに、情けない話、将来時間ができたらせめて単語が絵つきで紹介されている本を見て、単語だけでも覚えられないかなぁと思っているのですが、ハングルに関しても同じで(笑)
ただ、こんな風に詩を拝見していると、こういう勉強の仕方も一つの方法かなと思ったりします。それにしても、詩でハングルを読むと実に不思議な感じがします。。
ところでこの尹東柱という方は初めて知ったのですが、この方も治安維持法の犠牲になられた方なんですね。以前NHKで、同じ時代にやはりこの法の下でむごい亡くなりかたをされた方の特集を見ましたが、本当にひどかった。尹東柱さんのご冥福をお祈りしてやみません。
この詩はご自分の使命に向き合おうとする姿を詠われたものでしょうか。最後の「今夜も星が風にかすめられる」の「風」とは、東柱さんが戦った敵なのか・・私はただただ悲しくてなりませんが、この一文には東柱さんの非凡な才能を感じます。いつになるかまったく分かりませんが、遠い将来、相応の語学力がついたときはこの方の詩集を読んでみたいです。
by まりこ (2010-04-30 14:45) 

ppyy

花かんざしさん まりこさん こんばんは。
私はアイリス 大学シーンの後あたりから見ました・・・

花かんざしさんの 詩と碑文の訳の言葉がとってもきれい!

そして そういう美しい言葉で表現しながら
大変な時代のさなかに自分の道をきっちり踏みしめていった若いひとがいたのか~と じ~んときました。

まりこさん フランス語へも関心がおありなんですね。
音的に 韓国語もときどきフランス語??って聞こえるような時も あったり・・・ 
韓ドラ内でも 役者さんが上手にフランス語を話す場面が
あったりしますが すごいですよね。

花かんざしさんは 詩や台本や解説文など いろいろなジャンルを訳すことに挑戦されて 楽しみながらそれらを実にしていかれてるんですね~
by ppyy (2010-04-30 22:48) 

花かんざし

まりこさん、こんにちは♪
こちらにもコメントありがとうございます☆

まりこさんも「アイリス」をご覧になったのですね。
第1話は少ししか見られませんでしたが、第2話の放送は見ました~。韓国では「イケメンですね」の放送とかぶっていたので、見たことがありませんでしたが、なかなか面白いですね。

さて、この詩ですが、私は冒頭から圧倒されました。
熱心なクリスチャンらしく常に高く清らかな理想を持ち、現実は厳しい状況であってもキリストに倣った生き方をしようとする強い志を宣言しているかのように感じました。

本を読むと、京都で検挙され福岡へ送られ一年後に獄死したことについて、様々な疑問点もあるようです。本当に当時はひどかったようですね。

詩を読む限り、この方は他人に対して何か争うということとは無縁であったように思います。ただあの時代失われつつあった自分の国や言葉を本当に愛し憂慮していた純粋な方のようですね。

by 花かんざし (2010-05-01 13:04) 

花かんざし

ppyyさん、こんにちは♪
こちらにもコメントありがとうございます。

オモ!ppyyさんも「アイリス」をご覧になったのですね。2話もご覧になりましたか~?

さて、私が尹東柱の詩に興味を持つようになったのは、先日このブログでもご紹介した茨木のり子さんの「隣国語の森」の中で知ってからです。

『ほんとうに遅かった
けれどもなにごとも
遅すぎたとは思わないことにしています』

この言葉に勇気をもらったような気がして、今ごろ慌てて勉強中です。

近代の歴史について知らない事が多すぎて、学生時代とか何をしてたんだろうと思います。
でも、まだ遅くないと言い聞かせています。

韓国語で書かれた文章を辞書を使いながら訳す作業は、砂浜に埋められた一枚の大きな絵を手で探り、砂を払いながら掘り出していく感覚でもどかしいながらも結構楽しいものです。
でも、早くもっと上達してすらすらと読めるようになりたいものです。

by 花かんざし (2010-05-01 13:08) 

ppyy

花かんざしさん こんばんは。
茨木のり子さんの著書から ふくらんでいかれたのですね~

>砂浜に埋められた一枚の大きな絵を手で探り、
  砂を払いながら掘り出していく

わぁ~!絵に浮かんできます!!
素晴らしい情景ですね!

私は落ち着いて向かうことがなかなかできず
A4サイズの文章も 辞書で訳を探しながら 書き込み
ごちゃごちゃになってしまう紙面を 老眼?で追いながら
そのうち 初めの方の内容を 砂がこぼれるように忘れていってしまうという 惨状です。

花かんざしさんが取り組んでおられる姿や ご紹介下さる
記事の数々に刺激をうけることがまず 第一です。

まりこさん ハングルの母音
私も数年前 まったく 区別できない暗記できない、と何ヶ月?も悩んでいたことを覚えています。ところが 棒が1本増えるとアがヤに、オがヨに、と・・ NHKハングル講座の一言がぽろっと 効いて 嘘のように壁を乗り越えられました。
一緒に がんばりましょう☆

アイリスは 吹き替えとナマ声を切り替えしながら 3話まで
見てしまいました。


by ppyy (2010-05-01 20:54) 

花かんざし

ppyyさん、こちらにもコメントありがとうございます。

ppyyさんも韓国語を勉強なさっていたのですね~。
しかも数年前からだなんて。先輩だったのですね~。失礼しました。

一つの文を訳す作業は私にとっては手芸の「編み物」や「刺繍」に近いものだなあと感じることもあります。
以前はよく「編み物」も「刺繍」もやっていたのに、最近全然時間がなくて。
考えてみたら、そういう手芸をしていた時間が韓国語のために費やされているのでした~。

「手芸」も「韓国語」もどちらかと言えば、生活に必ず必要というものではありませんから、どうしてもつい後回しになってしまい、気がついたら「今日も何もできなかった…」で終わる日が多いです。

でも、時々「時間は作るものだ!」と思いなおし、料理や掃除の手を抜きつつ、韓国語をやっています。

私にとって韓国語の勉強を続ける力になっているのは、同じく韓国語の勉強に取り組んでおられる方々の存在です。時々近況を伺うと私も頑張ろうという気持ちになります。
ppyyさんもどうぞご一緒にがんばりましょうね!

そうそう、今日新大久保で「하늘과 바람과 별과 시」の本を衝動買いました☆
最近本を買いすぎ~~。どうしましょう。。。

by 花かんざし (2010-05-02 18:37) 

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