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映画「オーケストラ!」にカルチャーショック [クラシック音楽]

先日映画を観てきました。「のだめ後編」も観たかったのですが、今回はそれとは別に以前から気になっていた「オーケストラ!」を観る事にしました。この映画は評判も良さそうですし、公式サイトを開くと流れるのは私の好きなチャイコスフキーのヴァイオリン協奏曲。あらすじを読むとロシアの元天才指揮者が寄せ集めオケでコンサートを!?なんだか「ベバ」や「のだめ」を彷彿とさせる内容のようですし、しかも演目がチャイコンときたら感動間違いなし!期待を膨らませて劇場へ… 
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以下は映画の感想ですが、ちょっと辛口なので、まだご覧になっていない方はスルーしてください。

劇場を後にしてからも私の頭の中はずっと混乱していました。正直、感動という言葉は出てきませんでした。なぜだろう?とずっと考えていました。映画を観た方のレヴューを読んでも素晴らしいとか感動したという言葉が書き連ねてあるものが多いのに私はそうでない・・・。

これまでにも映画や美術展に行ってあまり良い感想を持てなかったものについてはブログで紹介することを避けてきました。せっかく「良かった」という思いを共感できる事に期待して検索してこちらにお越しくださった方に対して失礼にあたるのではないかと。

今回の映画も残念ながらそうしたボツ記事の一つになってしまったなと苦笑しながら帰宅しました。でも、なぜかこの映画は強烈な印象を私に植え付けたようで、何か語りたくてしかたないのです。

映画の内容は単純そのもの。そしてそこへ至る経過はあまりにも雑で荒っぽい。指揮者は別として一緒にパリにやってきたメンバーは本当にやる気あるのか全く理解できない行動をとるし。大きな入れ物に無造作に突っ込まれた楽器類(清掃用具じゃあるまいし)の乱暴な取り扱いにもビックリ。

「ベバ」で指揮者を演じたキム・ミョンミン氏は役作りのために指揮者でもありドラマの芸術監督でもあるソ・ヒテ教授から常に指導を受け続けていたことは「ベバ」のファンならよく知る話ですが、この映画はそもそもオケの練習シーンが全然出てこなくて。

実はこの映画は私が想像していたのとは少し違って、人間にとって「究極のハーモニーとは何か」が重要なテーマの音楽よりも社会ドラマ的な人間ドラマでした。物語は30年前のソビエト連邦時代に起こった出来事が重要なキーワードになっています。それから時間が止まったように生きていた人々があの時の夢を叶えようと動き始めます。公式HPにも社会から隅へ追いやられている人々が夢見ることを諦めない姿を通して人々に希望をもたらしたいといった事が書かれています。これはまさしく「ベバ」の企画意図と同じテーマですね。

考えてみるとストーリーは奇妙に「ベバ」に似ているのです。偽の寄せ集めオーケストラ。個性的な楽団のメンバー達、演奏会当日ステージに遅刻してくる演奏者(遅刻の理由は違いますが)。演奏会当日のリハーサル無し(と言ってもベバはそれまでにカン・マエによる厳しい練習を積んできていましたが)。演奏中のフラッシュバック(カン・マエの過去)

因縁のコンサートをパリで!ときたら、それに向けて全員が一丸となって同じ方向を向いて突き進むというのはいかにもスポ根的で時代遅れな感じなんでしょうか。日本人はよく練習熱心といいますが、外国の演奏家たちは練習にあまりこだわらないのでしょうか。

リハーサルなんかしなくっても30年間分の思いがあるし、音楽が身体に染み付いているから演奏は曲が始まればOK!という感覚。そして偽者オケなのにそのオケを咎めもせず熱狂的に受け入れる世界中の人々。優れた音楽は言葉、文化、民族、宗教の壁を越えて万人の心にストレートに通じるものだとは思いますが、あまりに出来すぎの結末にも。。。

はあ、だめですね私って。ありえないことに対する許容範囲がとても狭いようです。

でも私の好きなドラマを考えてみるとかなりありえない設定や状況になっているドラマも色々とあります。けれども「ありえない状況」を上回る「面白さ」があるからせいかどんな事も全て受け入れる事ができていました。そう考えると、この映画の場合は私にとって「ありえないこと」の方が「感動」よりも上回っていたのかもしれません。

それとも、これは慣れない外国映画だったからなのでしょうか?慣れない感性や感覚に戸惑って消化不良を起こしていた、いわゆるカルチャーショックなのでしょうか。この感覚は人それぞれですので、この映画に対し全く違った印象を持ったという人ももちろんいるでしょう。たぶん私のような人は少数なのかもしれません。

ごちゃごちゃ書きましたが、そもそもクラシック音楽はそんなに堅苦しいものではないということをこの映画では伝えたかったのかもしれないなとも思いました。もっと広く大きな心で素直に映画を楽しめばいいのですね。

ヒロインのメラニー・ロラン演じるヴァイオリニストのアンヌ=マリー・ジャケは掃き溜めに鶴と言ったら失礼かもしれませんが、本当に美しくて見とれていました~。
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それから今まで違う世界に住んでいて互いを知らなかったジャケとロマのヴァイオリン弾きの対面シーンは面白かったです。
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小さなネタでは笑いを誘う箇所がたくさんありましたよ。もしフランス語、ロシア語に通じていたらもっと面白く感じていたかもしれません。この映画ジャンル的にはコメディ?
原題は『Le Concert』(協奏曲)、こちらの方がしっくりきます。

日本公式サイト↓

http://orchestra.gaga.ne.jp/


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まりこ

花かんざしさん、こんにちは♪
新しいテンプレが初夏らしくていいですね~。まりこ地方は今日もなかなか暑いです。。

ところでこの映画の「ベバぱくり疑惑」についてですが、それはあり得るかもしれませんね。

というのが、小耳に挟んだことがあるんですけどベバはヨーロッパのどこかの国でも放映されたとか。
内容が衝撃的だけに、思わずパクりたくなったのかも(笑)

やはり内容がしっかりしていないと支持は得られませんよね。
by まりこ (2010-06-05 15:14) 

花かんざし

まりこさん、こんばんは!コメントありがとうございます♪
今年は天候が不順ですが6月なのでブログも衣更えしました^^
今日はこちらも暑いです~

さてこの映画ですが「ベバ」との共通点は確かに多いのですが、全く違うテイストになっていて…なので「カルチャーショック」なんです。

監督のインタビュー記事によるとこの映画はボリショイ交響楽団で実際に起こった「2001年の偽ボリショイ・オーケストラによる香港公演」と「1980年代ブレジネフ政権時にユダヤ人団員を庇った指揮者が解雇された」という二つの事実からヒントを得たそうです。

映画は「ベバ」の1~5話の話と似ている部分がありますが、「ベバ」の面白さは6話からですよね。
5話で全員の心が一つになって最高潮に盛り上がったと思いきや一気に現実に引き戻されて、そこからそれぞれの苦難が始まります。
そういう意味で「ベバ」は映画「オーケストラ!」とは違ってかなり現実的な物語だったと思います。もし監督や脚本家が「ベバ」をご覧になっていたらストーリーがもう少し違っていたのじゃないかしらと思います^^

ところで、「ベバ」がヨーロッパで放送されたとは初耳です。ネットを通して世界中の人が視聴しているとは聞いていますが、放送だとそれぞれの国でやっぱり吹替えとか、音楽差し替えとかもあるのかしら?

韓国ドラマはもはや世界中で楽しまれているコンテンツなんですね~~。

by 花かんざし (2010-06-05 22:56) 

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