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ラジオ劇場と「徳恵翁主」作家インタビュー記事より [【韓国小説】徳恵翁主]

韓国のKBSラジオ劇場「徳恵翁主」全31回の放送が終わりました。
KBSのHPから台本の閲覧と再視聴がいつでも可能です。HPはこちら。(次々更新されますので、見当たらない場合は放送日201071日~2010731日を手がかりに探してみてください)

時々聞いていましたが、土日も含めた毎日だったので、どんどん進む進む。原作小説の方はなかなか読めなくて全然進んでいないので、まずはもう一度ラジオ劇場を台本と合わせてじっくり聞いてみようと思います。

ところでネットでこんな記事を見つけましたのでご紹介します(珍しく日本語)

http://globe.asahi.com/bestseller/100719/03_02.html


これとは別に作家クォン・ビヨン氏のインタビュー記事を見つけたのでこちらも拙い訳ですがご紹介いたしますね。上で紹介した日本語記事と内容が重なりますが上半期ベストセラー第1位を受けてのインタビューです。

以前このブログでご紹介した「著者の文」にも書かれていましたが、徳恵翁主と作家の出会いや出版に至るまでのエピソードもなかなかドラマチックですね。記事の最後に教保文庫2010年上半期ベスト10が紹介されていますが、このランキングもとても興味深かったです。

翁主の古い写真を見て吸い込まれるように「書かなくて」と決心しました

2010年上半期ベストセラー分析――販売部数一位「徳恵翁主」のクォン・ビヨン作家
中央SUNDAY>Magazine>Interview イ・ジヨン記者/ 第173号/2010.07.04入力

高宗皇帝の末娘、大韓帝国最後の皇女の物語を盛り込んだ歴史小説「徳恵翁主」(茶山冊房)が今年上半期最も多く売られた本として集計された。(教保文庫統計 表参照)「言葉の借金をすることはできない」という遺言で逆に品切れ現象を引き起こした法頂僧侶(ポプチョンスニム)の著書とシン・ギョンスク、村上春樹、ベルナール・ヴェルベールなど有名作家たちの作品を押しのけた結果だ。

「徳恵翁主」を書いたクォン・ビヨンさん(55)はずっと蔚山で活動してきた小説家だ。1995年新羅文学賞を受け文壇デビューして2005年に創作集「その冬の寓話」を出版したが文壇に彼女の名前を刻印させることはできなかった。長い歳月無名作家だった彼女が初の長編小説「徳恵翁主」で一気にベストセラー作家になったのである。昨年12月に出版された「徳恵翁主」の販売部数はこれまでに50万部を超える。初版で5000部を印刷した出版社でさえ予測できなかった今年の出版界の最大の異変だ。

徳恵翁主(1912~89)は高宗皇帝が貴人梁氏との間で還暦にもうけた娘だ。1907年日帝によって強制退位させられた高宗に「徳寿宮の花」徳恵翁主は唯一の慰めになった。しかし衰退した国の翁主の運命は苦しく恥ずかしいものだった。

高宗の死後、徳恵翁主は強制的に日本に引っ張られて行き、対馬の伯爵と政略結婚をする。以後10余年を精神病院に監禁されて過ごし一方的な離婚通知をうける。唯一残った血縁の娘、正恵は遺書を残したまま行方不明になった。1945年解放されたがすぐに帰国できなかった。1962年精神が壊れたまま37年ぶりに祖国に戻ってきた徳恵翁主は昌徳宮の楽善斎で余生を送った。亡国の悲しみを全身で受け止めた生涯だった。

彼女の人生を作家的想像力で再構成した小説家クォン氏に会って「徳恵翁主」の裏話を聞いてみた。「徳恵翁主殿下に対する鎮魂歌(レクエム)だと思って小説を書いた。」と言いながら作家は口を開いた。

――私たちに『徳恵翁主』は未知の人物だった
「読者の反応の中には『こんな方がいるとは知らなかった。無関心すぎた。大韓帝国についてもう一度知りたい』という内容が多い。私たちは大韓帝国の歴史を、国を失ってしまった恥ずかしい歴史として規定し顔をそむけてきた。朝鮮を無能な王朝だと絶えず洗脳させた日帝の影響でもある。徳恵翁主一人が大韓帝国に対する誤解を解くことのできる鍵になることができそうだ。」

――どうやって徳恵翁主を知るようになったのか
「4年前頃にある新聞で大韓帝国に再び光を当てる記事を見た。紙面に徳恵翁主の幼い頃の写真が一枚載っていたのだが、その写真を見た瞬間吸い込まれるような感じを受けた。『この方について調べてみなければ』という考えで資料を探した。国内の資料の中には書くに値するものが無かった。歪曲された情報も多かった。

一例として96年MBCテレビで放送された光復節特集ドラマ『最後の皇女徳恵』では徳恵翁主の夫武志を暴悪な人物に描いていた。日帝に対する反感のためだろうが、これは違うと思った。(小説『徳恵翁主』で武志は温和で懐の深い人物だ。ただし大韓帝国の皇女徳恵翁主と決して『ひとつ』になれない出自的な限界があっただけだ)

色々調べた末に日本の女性学者本馬恭子が徳恵翁主の人生を表わしたノンフィクション『徳恵姫―李氏朝鮮最後の王女』を書いたと言う事実を知るようになり、蔚山大学図書館で本を手に入れ読んだ。」

――日本の学者が徳恵翁主に関心を持っていたとは意外だ
「本の初めのページをめくると同時に衝撃を受けた。著者が韓国の読者に書いた献辞がついていたのだが、『大韓帝国最後の翁主ではないのか、よく調べる事を願う』という内容だった。その瞬間恥ずかしい思いがした。日本の女性がこのように几帳面に記録していたのに韓国の女性たちは何もしていないと言う恥ずかしさだった。私が小説としてでも徳恵翁主を形象化させようと決心した。」

――その後本が出るまで丸3年かかった。「庚戌国恥(日韓併合)100年」を待ち出版日程を見計らっていたのか
「正直、全然意識していなかった。けれども妙に時期がぴったり合って、お蔭で本もブームに乗るようになった。初めは本馬恭子の本を相当部分参考にして小説を書いた。ところがその間に彼女の本が韓国語に翻訳されて出た。似たような内容なのでどうしようかと思って力が抜けた。3、4ヶ月手付かずでさまよい、完全にもう一度再創作をする気持ちを揺さぶった。もし初めに書いていた作品がそのまま出版されたとしたら間違いなく盗作疑惑をかけられただろう。

新しい作品を書き始め、昨年5月ほとんど仕上げだった頃に交通事故に遭った。40日間入院をすることになって出版日程がまた延びた。結局12月になってはじめて本が出たのだが、ちょうど今年が『庚戌国恥100年』であるので言論と読者の関心が集中した。見えない力が私を取り囲んでよい方向へ追い込んでくれたようだ。徳恵翁主殿下が助けてくれたと思う。」

――かなり神秘主義的な解釈だ
「資料調査をしながら京畿道南楊州市の洪裕陵にある徳恵翁主の墓所を訪ねて行った。紫色の小菊を一束持って行き、お参りをして『殿下の不運な人生を小説でよみがえらせようと思う』と申し上げた。そして三日後、夢に徳恵翁主殿下が現れた。私が買って行った小菊を胸に抱いたまま私を寂しそうに見下ろしたかと思うと消えうせた。まさに吉夢だと思った。」

――作品の中の徳恵翁主の姿は弱々しい。特に業績といっても数えるものがない人物として描いたが…
「国が存廃危機に置かれたのだが一挙手一投足を監視された翁主が何をすることができただろうか。そのように哀れに生きるしかできなかったのが大韓帝国の歴史だ。歴史の傷をありのままにまっすぐ見たら…と思うことが作家としての私の願いだ。

また皇室復元問題も私たちの社会が一度くらい考えてみたらいいのにと思う。皇室が良かったとか悪かったとかを問いただす事ではない。私たちの悠久の歴史を引き継いでいる象徴として皇室は意義があるのではないだろうか。」

――作家として珍しい成功を収めた
「地方の無名作家としては本当に奇跡だ。95年に文壇デビューした後10年間こつこつと文章を書いた。作品は溜まっていったが本を出す機会はなかった。『気の毒な私の子ども達の家を作ってあげなければ』と考えて2005年自費出版の形で作品集『その冬の寓話』を出した。全部で1000部印刷してあちこち配ったのだが、今でも200部が残っている。それで『徳恵翁主』初版を5000部刷って『これをどうやって全部売ろうか?」と思った。『私が好きなことだから見返りを期待しないでやろう』という考えで『文』と言う紐を放さなかったのが良かったと思う。」
 

◆参考資料◆
2010年上半期ベストセラー順位
 
(資料=教保文庫)順位/図書名/著者/出版社
1、徳恵翁主 著:クォン・ビヨン(茶山冊房)
2、美しい仕上げ 著:法頂(文学の森)
3、1Q84 Book1 著:村上春樹(文学村)
4、死ぬ時後悔すること25 著:大津秀一(21世紀ブックス)
5、一期一会 著:法頂(文学の森)
6、パラダイス1 著:ベルナール・ヴェルベール(開かれた本)
7、一人は皆を皆は一人を 著:法頂(文学の森)
8、サムスン(三星)を考える 著:キム・ヨンチョル(社会評論)
9、ママをお願い 著:シン・ギョンスク(創批)
10、無所有 著:法頂(汎友社)
 


記事原文はこちら↓

http://sunday.joins.com/article/view.asp?aid=17918



徳恵翁主が上半期で1位にも驚きましたが、法頂僧侶の本が4冊もベストテン入りしているのも注目ですね。今年の3月に入寂した法頂僧侶の遺言で「絶版」の意思が発表されるや人々が慌てて書店に走った現象が起きたそうです。第九位の「ママをお願い」は2009年のベストセラーですが、まだまだ売れてますね。それから日本の書籍の翻訳版が2冊入っているのも興味深いです。


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まりこ

花かんざしさん、こんばんは♪
毎日暑い日が続きますねぇ~。お元気でお過ごしでしょうか。
先日割と平気かなと思いながら36℃を越えた部屋で我慢していたら、次の日えらい目に遭いました(汗)。後で知ったんですが、人体にはとっても危ないみたいですね、この温度。花かんざしさんも、熱中症には気をつけてくださいね^^
翻訳お疲れ様でした。本馬氏の献辞がすごいなぁと。。私が氏なら、そういう言葉を投げかけるのも勇気がいるなぁと思いました。
私も不思議だと思ったのが、やはり本が出版されるに到る経緯とタイミングですね。より多くの人に手にとってもらうためにこうなったのではないかと。偶然に思えることも、やはり何かしらの意味のあるプロセスなのではないかと、こういう話を聞くにつけ思います。
ほっとしたのは、この小説で夫の宗氏が本馬氏の作品に沿うような人物像で描かれているらしいという点です。もしかすると、本当にドラマ化や映画化もあるかもしれませんね。
日韓合作は無理かもしれませんが、せめて宗氏だけは『徳恵姫』や『徳恵翁主』で描かれた人物像として演じられることを願ってやみません。 
by まりこ (2010-08-08 21:14) 

花かんざし

まりこさん、おはようございます^^
コメントありがとうございます♪

オモ~! 36℃を越える室内で我慢なんて!!
今年は特に室内で熱中症になってしまう方が多いようですし、炎天下でなくても注意しないといけないようですね。まりこさんもう大丈夫でしょうか?

本馬さんはご自分の著書を韓国のあちこちの図書館に寄贈されたようですが、作家のクォン・ビヨンさんは地方大学の図書館でその内の一冊と出会い、今回の小説を書くきっかけになったそうですね。その本馬さんの著書が逆に現在の日本では書店で入手困難というのも皮肉な現象です。

韓国でも多くの本が出版されていることだろうと思いますが、その中で第1位になるなんて、よほど何か読者をひきつけるものがあるのでしょうね。出版までの紆余曲折もより多くの人に広まるために用意された道のようですね。

小説はまだ途中までしか読んでいないのでいいかげんな感想ですが、あくまで主人公は徳恵翁主ですので日本に対する描き方は決していいものではありません。まあ仕方ありませんが。このあたり私の中では妙に「済衆院」とかぶります~~。

でも作家さんは本馬恭子さんの著書をはじめ様々な資料を参考にしてこれまでの誤解を解くことを試みられているという話ですので期待したいと思います。

by 花かんざし (2010-08-09 09:00) 

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